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アラビア海からK2まで ― 高低差8,611m、北はカラコルム山脈・ヒンドゥークシュ山脈・ヒマラヤ山脈が織りなす山岳地帯があり、中央部にはソルトレンジ、スレイマン山脈が、そして南部には広大な砂漠地帯・泥火山地帯が広がる変化に富んだ地形を持つパキスタン。さらに山岳地帯から流れ出る川がギルギット付近でインダス川に合流し、アラビア海まで注ぐインダス水系が貴重な渡り鳥のルートとなっています。


パキスタンは野生動物の保護やワイルドライフツーリズムの発展が遅れている国ではありますが、一般のパキスタンの人々の野生動物保護の意識は高まってきています。パキスタンに生息する野生動物・鳥類の一部だけではありますが、観察できる地域と合わせて「パキスタンの野生動物」をご紹介します。

Sighting Spots

野生動物に出会える場所

パキスタン北部山岳地帯からインダス川流域、南部の砂漠まで野生動物と出会うチャンスがあるスポット・国立公園をご紹介します。

#01

クンジュラブ国立公園
Khunjerab National Park

ユキヒョウ

ユキヒョウ

ユキヒョウ

オナガマーモット

ヒマラヤアイベックス

ヒマラヤアイベックス

イワシャコ

ヒゲワシ

コクサール

シロガシラジョウビタキ

ヒゲワシ

ヒマラヤアイベックス

冬のクンジェラーブ国立公園

ギルギット・バルティスタン州にある国立公園で、パキスタンの最北に位置し中国との国境となっています。面積は2,269平方キロとパキスタンで3番目に大きな国立公園。公園の中をクンジュラブ峠までカラコルム・ハイウェイが貫いています。国立公園はパミール川沿いの谷、峻険な岩場、パミール高原の緩やかな高原地帯など変化に富み、大変美しい景色の国立公園です。
クンジュラブ国立公園で出会いたい野生動物の筆頭はユキヒョウ Snow Leopardでしょう。保護政策によりアイベックス Himalayan Ibexの個体数も増え容易に観察できるようになりました。高原地帯ではオナガマーモットLong-tailed Marmot、チベットオオカミTibetan Wolf、小型の野生動物や鳥を狙うイヌワシ Golden Eagle、死肉を探すヒマラヤハゲワシ Himalayan Vulture、クロハゲワシCinereous Vulture、ヒゲワシLammergeier (Bearded Vulture)などの猛禽類を見ることもあります。小動物を探すアカギツネ Red Fox、イワシャコChukar Partridge、ベニハシガラスRed-billed Chough、キバシガラスYellow-billed Choughはカラコルム・ハイウェイ付近でよく観察されます。
クンジュラブ国立公園設立の要因となったマルコポーロシープは、1970年代のカラコルム・ハイウェイ建設時の狩猟により激減し、その後もまだ生息数は回復に至っていません。マルコポーロシープMarco Polo Argali、バーラル(ブルーシープ)Himalayan Bharal、ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bearの観察できる可能性のある地域へはトレッキングが必要となります。 夏は多くの観光客がクンジュラブ国立公園を訪れます。野生動物の観察には観光客が多い時期を避けた方が良いでしょう。

#02

上部フンザの村の周辺
Around the village of Upper Hunza

アイベックス(カイバル村)

アイベックス(カイバル村)

ベニハシガラス

ヒゲホオロ(カイバル村)

ユキバト

ユキバト

上部フンザの冬景色

杏のカイバル村

シロガシラジョウビタキ

カササギと杏

クンジュラブ国立公園に近い上部フンザの村付近では野生動物を観察するチャンスがあります。KVO(Khunjerab Villagers Organization)に属する7つの村はクンジュラブ国立公園との緩衝地帯の管理・野生動物保護を行い、違法な狩猟を禁止しコントロールされたトロフィーハンティングのみが行われています。カイバル村、パスー村付近の谷でもユキヒョウの目撃情報は多く、冬にはアイベックスが果樹園近くまで降りてくることもあります。
パミール川沿いや村の果樹園で野鳥観察もできます。カササギ Eurasian Magpieは村内でも見られ、果樹園や川沿いのヤナギの林ではベニビタイセリン Fire-fronted Serin、シロガシラジョウビタキ White-winged Redstart、カベバシリWallcreeper、アカマシコ Common Rosefinch、モウコナキマシコ Mongolian Finchなどが観察できます。冬はユキバトSnow Pigeonやヒマラヤセッケイ Himalayan Snowcock が高地から降りてきます。

#03

デオサイ国立公園
Deosai National Park

ヒマラヤヒグマ

ヒマラヤヒグマ

デオサイ国立公園

キガシラセキレイ/p>

ヒマラヤヒグマ

夏のワイルドフラワー

オナガマーモット

オコジョ

ギルギット・バルティスタン州のインドとの国境に近い高原にある国立公園。夏にはワイルドフラワーが咲き乱れ「天空の花園」と称されるデオサイ国立公園。平均標高4,100m、3,584平方キロの国立公園には貴重なヒマラヤヒグマHimalayan Brown Bearが生息しています。ヒマラヤヒグマ観察のためには標高の高い高原を歩かなくてはなりません。オナガマーモットLong-tailed Marmot、オコジョ Stoat、アカギツネ Red Foxなどの野生動物、ハマヒバリHorned Lark、キガシラセキレイ Citrine Wagtailなどデオサイ高原で繁殖する野鳥などはキャンプ地のすぐ近くで観察できます。

#04

チトラル・ゴル国立公園
Chitral Gol National Park

マーコール

マーコール

マーコール

クロハゲワシ

ヒゲワシ

ヒマラヤハゲワシ

カイバル・パクトゥンホワ州の国立公園で、チトラルの町からアクセスできる国立公園です。77.5平方キロの国立公園はヒンドゥークシュ山脈のスロープに位置し、標高1,500~5,000mの間に岩場、なだらかな山の斜面が広がり針葉樹が育っています。チトラル・ゴル国立公園のハイライトとなる野生動物はマーコール Kashmir Markhorです。マーコールの雌と子供は通年通じて国立公園で観察できますが、角が立派なオスが観察できるのは冬だけです。繁殖期になると普段は高地にいるオスが降りてきて、運がいいと角を突き合わせて優劣をつける行動が観察できます。その他、ユキヒョウSnow Leopard、オオヤマネコ Eurasian Lynxが観察されることもあります。ヒゲワシ Lammergeier (Bearded Vulture)、ヒマラヤハゲワシ Himalayan Vulture、クロハゲワシ Cinereous Vulture、イヌワシ Golden Eagleなどの猛禽類も観察できます。

#05

チトラル周辺の保護区
Game Reserve around Chitral

マーコール(トウーシ・シャシャ保護区)

マーコール(トウーシ・シャシャ保護区)

マーコール(トウーシ・シャシャ保護区)

マーコール(ガヒラート・ゴレーン保護区)

ガヒラート・ゴレーン保護区

カワビタキ

チトラルから望むティリチミール

チトラルから望むティリチミール

アユンから望むティリチミール

ホオジロヒヨドリ

チトラル周辺にはトゥーシ・シャシャ保護区 Tooshi-Shasha Conservancy、ガヒラート・ゴレーン保護区 Gahirat (Gehret) Goleen Conservancyがあり、いずれもマーコールを保護し違法な狩猟を禁止し、コントロールされたトロフィーハンティングだけが行われています。トゥーシ・シャシャ保護区は川の対岸にマーコールが水を飲みに降りてくることがあり、至近で観察できるチャンスがある場所です。ガヒラート・ゴレーン保護区は峻険な岩山が荒々しい美しい保護区です。
チトラル川沿いから望むヒンドゥークシュ最高峰ティリチミール(7,616m)は圧巻です。チトラル川の河原や果樹園では、カワビタキ Plumbeous water redstart、ホオジロヒヨドリ Himalayan Bulbul、シロミミヒヨドリ White-eared Bulbul、オオルリチョウ Blue-whistling Thrush、セアカジョウビタキ Eversmann’s Redstart 、ムナフガビチョウStreaked Laughingthrush などが観察されます。

#06

マルガラ・ヒル
Margalla Hill

アオノドゴシキドリ

ハイバラメジロ

オオルリチョウ

ホオアカマルハシ

キバシサンジャク

コチャバラオオルリ

シマキンパラ

タイワンオナガ

ホオジロヒヨドリ

イスラマバードの北にあるヒマラヤ山脈の南西端となる丘陵地帯がマルガラ・ヒル。マルガラヒルズ国立公園の一部であり、週末になると多くのハイキング客でにぎわうトレイルがあります。
このトレイルや水場でバードウォッチングを楽しむことができます。特に11月~2月にかけては多くの渡り鳥がやってきます。アオショウビン White-throated Kingfisher、ミドリハチクイ Little Green Bee-eater、アオノドゴシキドリ Blue-throated Barbet、コチャバラオオルリ Rufous-bellied Niltava、ムネアカゴシキドリCoppersmith Barbetなど、多数。車で丘を上がる場合は、道路上にニホンザルに似たアカゲザル Rhesus Macaqueが現れます。

#07

ソルトレンジ
Salt Range

オオフラミンゴ

オオフラミンゴ

オオフラミンゴ

ソリハシセイタカシギ

ソウゲンワシ

ソルトレンジ

パンジャーブウリアル

パンジャーブウリアル

岩塩を産出することからソルトレンジ Salt Rangeと名がついた、インド大陸とユーラシア大陸が衝突した褶曲部のゆるやかな丘陵地帯で、ここにはパンジャーブウリアル Punjab Urialが生息しています。パンジャーブウリアルは生息地が家畜の放牧により脅かされ、高速道路によって群れが分断されなど個体数が激減していましたが、パンジャーブ州のCBO(Community Based Organization)の保護活動により生息数が回復してきました。
パンジャーブウリアル Punjab Urial はパキスタンの固有種で、パンジャーブ州のジェルム川からインダス川の間にあるソルトレンジSalt Range(塩の山脈)とカラチッタ山脈 Kala Chitta Rangeのみに生息しています。
ソルトレンジにあるソーン渓谷 Soon Valleyにはウッチャリ湖 Uchhali Lake、カビキ湖 Khabikki Lakeなどの塩湖があり、渡り鳥の貴重な水場となっています。冬場にはカモの仲間がたくさん飛来するほか、オオフラミンゴ Greater Flamingoが見られることでも知られています。

#08

サッカル - インダス川
Sukkur – the Indus River

インダスカワイルカ

インダス川に架かる橋

インダスカワイルカ

インダスカワイルカ

インドのラダック地方を源流とするインダス川はスカルドゥ、ギルギット付近を経て南下し、パキスタンを貫きアラビア海へ注ぎます。サッカル付近のインダス川ではインダスカワイルカIndus River Dolphinが観察できます。バッレジ(灌漑用のダム)建設により中流の 97km区間にしかいませんが、ボートから、岸辺からもインダスカワイルカを見ることができます。

#09

キルタール国立公園
Kirthar National Park

シンドアイベックス

シンドアイベックス

シンドアイベックス

キンイロジャッカル

ズグロサバクヒタキ

ステップヤマネコ

スナヒバリ

ミナミオオモズ

シンドアイベックス

キルタール国立公園

シンド州のキルタール山脈にある3,087平方キロに及ぶ広大な国立公園。石灰岩の岩山と砂漠、灌木の連なる景色が美しい国立公園です。公園内にレストハウスがありここをベースに野生動物の観察に行くことができます。キルタール国立公園で期待したいのは、シンドアイベックスSindh Ibex / Wild Goat。大きな角を持つ200頭を越えるシンドアイベックスのオスの群れが歩く光景は圧巻です。その他、アフガンウリアル Afghan Urial、チンカラ Gujarat Chinkara、ステップヤマネコ Asiatic Wildcat、ジャッカル Golden Jackal、シマハイエナ Striped Hyenaなどの野生動物が見られます。野鳥はズグロサバクヒタキHume’s Wheater、ミナミオオモズ Southern-grey Shrike、スナヒバリ Desert Larkなど乾燥・砂漠地帯の鳥が観察されます。

#10

ヒンゴル国立公園
Mud Volcano of Hingol National Park

泥火山地帯

エジプトハゲワシ

カタシロワシ

ニシオオノスリ

ニシオオノスリ

アフリカクロサギ

泥火山地帯

ワライバト

海岸のカモメ

泥火山地帯

泥火山地帯

ミユビシギとシロチドリ

バロチスタン州の国立公園でその面積も6,100キロ平方メートルの最大の国立公園。パキスタン南部海岸を構成するマクランコーストに沿って伸び、ヒンゴル川がアラビア海に注ぐ河口部やラグーンは渡り鳥の重要な休憩地です。ヒンゴル国立公園を特徴づける景観は泥火山の存在です。泥の作り出す独特の山に囲まれた野生動物の観察、バードウォッチングは格別です。国立公園内のヒンドゥー寺院ナニ・マンディール Nani Mandir付近ではシンドアイベックス Sindh Ibexの姿をよく見かけます。国立公園内にはシンドアイベックスの他、チンカラ Gujrat Chinkara、シマハイエナ Striped Hyena、ジャッカル Golden Jackal、オオカミ Indian Wolfなどの哺乳類が生息します。野鳥は、稀少な猛禽類が見られますが、残念ながら違法な捕獲に使われている罠もみかけます。マクランコーストのラグーンにはシギ・チドリ類、モモイロペリカンGreat White Pelican、ニシハイイロペリカン Dalmatian Pelican、アフリカクロサギ Western Reef Egretなどが観察されます。





Wildlife of Pakistan

パキスタンの野生動物

パキスタンで出会いたい憧れの野生動物と言えばユキヒョウですが、アイベックス、ウリアル、マーコール(パキスタンの国獣)など立派な角を持つ動物が生息し、その数は増えてきています。一部ではありますが、パキスタンで観察が可能な野生動物をご紹介します。

ユキヒョウ
Snow Leopard / Panthera uncia

ユキヒョウはヒマラヤなどアジアの高地に生息する大型の肉食獣で「幻」とも言われ、見ることが非常に難しい動物でした。最近ではインドのラダックでユキヒョウ観察を主とするツアーが行われるようになりましたが、依然として遭遇率の低さや距離など、観察が難しいのが現状です。
ユキヒョウの観察の可能性が高いエリアは、上部フンザの山岳地帯、KVO保護区(クンジュラブ国立公園との緩衝地帯)、クンジュラブ国立公園 Khunjerab National Park、チトラル・ゴル国立公園 Chitral Gol National Park などですが、アイベックスやウリアル、マーコールなどが生息し、家畜が放牧されている地域ではどこでも遭遇のチャンスがあり、トレッキング中に目撃されることもあります。
パキスタンでユキヒョウを探すことは、他の地域に比べ2つのメリットがあります。ひとつはクンジュラブ峠に至るカラコルム・ハイウエイの道です。国境の町ススト(標高約2,800m)からクンジェラブ峠(標高約4,600m)はおよそ 70Kmあり、そのほとんどがユキヒョウの生息域を通っています。冬は雪でクンジェラブ峠の道も封鎖されるため通る車両も少なく、早朝道路上を歩いた新しいユキヒョウの足跡が見られます。雪上の足跡を追えばユキヒョウが見つかることもあり、 谷が狭いためユキヒョウが近くにいることもあります。道路上からユキヒョウを見つけるチャンスがあるということは、麓の村の暖かい宿に泊まり、ハードな歩きをせずにユキヒョウを観察できるということです。これは、観察するものにとって大変ありがたいことです。
クンジュラブ峠付近でカラコルム・ハイウエイを用いてユキヒョウを探すときは、谷下にユキヒョウが降りてくる時期がもっとも見られる確率が高くなります。一般的に2~3月が繁殖期で目にしやすいと言われていますが、パキスタンのクンジュラブ峠では雪が多く、ユキヒョウの餌となるアイベックスが降りてくる季節に観察チャンスが良いようです。

ヒマラヤアイベックス
Himalayan Ibex / Carpa sibirica sakeen

アイベックスはヨーロッパアルプスからアラビア半島、中央アジアからインド、シべリアの山岳地帯に生息する野生ヤギの仲間。パキスタン北部で観察されるのは亜種のヒマラヤアイベックス Himalayan Ibex Carpa sibirica sakeenです。
標高が高い峻険な岩山に生息し、5,000mを越える高地まで移動することもあります。パキスタンでは上部フンザ地方のカラコルム・ハイウェイ上からも観察することができます。クンジュラブ国立公園 Khunjerab National Park では、冬の繁殖期、春の芽生えの季節、秋の実がなる季節に標高3,000m付近まで降りてくるため観察しやすくなります。
KVO(Khunjerab Villagers Organization)など各村が管理する保護地域では違法ハンティングが取り締まられ、コントロールされたトロフィーハンティングが行われています。個体数は増加傾向にあります。

マーコール
Markhor / Capra falconeri

パキスタンに野生動物を目的に来るならば、まず見ておきたい生き物がマーコールです。らせん状に伸びた大きなツノが特徴的なヤギの仲間でパキスタンの国獣でもあり、シンボルとなっている生き物です。アフガニスタンとパキスタンの山岳地域が主な生息地であり、その分布と生息地によっていくつかの亜種に分かれています。 12月はマーコールの繁殖期。オスとメスはふだん離れて生きていますが、この季節になるとメスとの出会いのためオスが標高の低い地域へと集まってきます。つまり、ふだんは見ることが難しいマーコールのオスがこの季節には観察できるチャンスがあります。そして順位をつけるためにオス同士がツノをぶつけて戦う迫力あるシーンにもこの季節なら運が良ければ出会うことができます。

カシミールマーコール
Carpa falconeri cashmiriensis

カシミールマーコールを観察するならば、チトラル・ゴル国立園が良いでしょう。大きなオスが集まります。国立公園であり、狩猟されていないため警戒心が少なく、近くで自然な姿を観察することができます。またヒンドゥクシュ山脈の美しい山々を眺めながら観察することができるのは格別です。その他、トゥーシ・シャシャ保護区、ガリアート・ゴレン保護区でも観察できます。

アストールマーコール
Carpa falconeri falconeri

アストールマーコールはマーコールのなかでも角のらせん回転が少なく、角が横に伸びます。アストール谷で観察することができます。

パンジャーブウリアル
Punjab Urial / Ovis punjabiensis

ウリアルは雄の角が弧を描いて大きく巻き、首の下に長い毛の房がある野生のヒツジです。南アジアから中央アジアにかけての山岳地帯に生息。パキスタンのパンジャーブ地方に生息するウリアルはインドのラダックウリアル Ladakh Urialと同じ扱いをされていましたが、2016年に発刊された "BOVIDS of the World" (世界のウシ科動物図鑑)ではパンジャーブウリアル Punjab Urialとして独立種になりました。世界に800頭~1000頭しかいない絶滅危惧種です。
パンジャーブウリアル Punjab Urial はパンジャーブ州のジェルム川からインダス川の間にあるソルトレンジSalt Range(塩の山脈)とカラチッタ山脈 Kala Chitta Rangeのみに生息しています。イスラマバードから日帰りでの観察も可能です。パンジャーブウリアルは生息地を家畜に追いやられ、高速道路で分断されるなどして個体数が激減していましたが、パンジャーブ州のCBO=Community Based Organizationの保護活動により回復傾向にあります。パンジャーブウリアルはCBOの管理する保護区で観察することができます。

シンドアイベックス
Sindh Ibex / Wild Goat Carpa aegagrus blythi

英語ではWild Goat (和名はパサン)と 呼ばれ家畜のヤギの原種とされる生き物で、地中海からパキスタンに生息し、シンド州のものは特に体色が薄くシンドアイベックスと呼ばれ亜種とされています。またパキスタンのチルタン国立公園 Chiltan National ParkにはチルタンゴートChiltan Goat Chilatan aegagrus chialtanensisと呼ばれる亜種も生息し、この亜種はパサンとマーコールの交配したものではないかとも言われています。
シンドアイベックスはアラビア海にも近いキルタール国立公園Khirthar National Parkで観察することができます。美しい砂漠の岩山の風景のなかで複数のオスが群れて歩く姿は圧巻です。警戒心が強く、人との距離は 800 mほどないと落ち着かないようで、観察のためには静かに近づく必要があります。

アフガンウリアル
Afghan Urial / Ovis cycloceros

家畜のヒツジの原種とされる野生のヒツジはムフロンと呼ばれ、ヨーロッパからヒマラヤまで1種で、東のヒマラヤに生息するものはウリアルとして亜種になっていました。その後、ウリアルは独立種となりましたが、どこまでがウリアルでどこまでがムフロンであるのかはわかりにくく、特にパキスタンの西側のアラビア海付近に生息するシンドウリアルと現地で呼ばれる野生のヒツジの分類はムフロンであるのかウリアルであるのか難しい判断でしたが、2016年に出版されたウシ科の図鑑によれとシンド州のウリアルはアフガンウリアルとしてイラン、イラク、トルクメニスタン、アフガニスタンからパキスタンのシンド州まで生息する独立の野生ヒツジ種となりました。 アフガンウリアルはシンドアイベックスと同じくキルタール国立公園で観察可能です。シンドアイベックスよりも緩斜面を主な生息域にしています。

ウーリームササビ
Woolly Flying squirrel / Eupetaurus cinereus

1911年に 11 枚の毛皮で種として記載されましたが、 1995 年の再発見まで長い間絶滅したと考えられていました(もちろん現地では観察されていました)。生きたものを観察されたことがなかった世界最大のムササビです。古い記録のため毛皮がどこで収集されたのかも分かっておらず、1990年にパキスタンで再発見されました。さらに遠く離れたチベットと雲南でも近縁の種が最近発見されました(チベットウーリームササビとウンナンウーリームササビとして2種の新種となりました)。
全長 1.2 mにもなり、体が大きいため樹洞には住めずに断崖絶壁の岩穴に生息します。
ウーリームササビはパキスタンにのみ生息する固有種(インドの北西部にもいると言われる)。針葉樹の葉や種を主食べています。何百万年も同じ岩穴を使っているため、岩穴にはウーリームササビの糞尿がたまり、岩のような半化石になっており、それが「サラジット」と呼ばれる民間薬になっていて関節痛などに効果があると言われています。

インダスカワイルカ
Indus River Dolphin / Platanista gangetica minor

サッカル付近のインダス川に生息します。灌漑用のダム建設により中流の 97 km区間にしかいなく、 1100~1400 頭生息すると言われています。最近はインドのガンジスカワイルカと同種にしてインドカワイルカとされることが多いようです。サッカルではボートにのってインダス川を楽しみつつ観察することもできますが、もっとも観察に適しているのはサッカルにある橋のたもとで、数頭のインダスカワイルカが空気を吸うときに水面に出る姿を観察することができます。口は魚を捕まえるために細く長く、ときどき顔を出すこともあります。目はほぼ退化していて、音波で障害物や餌となる魚の場所を探ります。

ヒマラヤヒグマ
Himalayan Brown Bear / Ursus arctos isabellinus

ヒマラヤヒグマはヒグマの亜種でヒマラヤ山脈とその周辺に暮らすヒグマ。もともと、ネパール、チベット、北インド、北パキスタンに広く生息しましたが、トロフィーハンティングや毛皮・薬の材料目的として狩猟され、生息地域を失い激減しました。パキスタンでは150~200頭ほどが生息するのみと言われて世界的にも1000頭以下と言われています。 パキスタンのデオサイ国立公園Deosai National Parkは希少なヒマラヤヒグマが暮らす平均標高4,100mの高原です。個体数が激減したヒマラヤヒグマの保護のため1993年に設立された国立公園ですヒマラヤヒグマは5月ごろに冬眠から開け、夏のデオサイ高原で草を食べ、時にはマーモットを捕食する光景も見られます。

Wildlife Tour

パキスタンのワイルドライフツアーの紹介

知られざるパキスタンの野生動物を追う、インダス・キャラバンのワイルドライフツアー。
入念な視察、地元コミュニティとの打ち合わせにより実現したプログラムです。
ヒマラヤヒグマ、マーコール、アイベックス、そしてユキヒョウなど、ヒマラヤ、カラコルム、ヒンドゥークシュの出会う「世界の尾根」を舞台に野生動物を狙います。

ヒンドゥークシュに巨大角のマーコールを求めて
シーズン:12月~4月

「野生ヤギの王様」オスのマーコールを求めて、ヒンドゥークシュ山脈の麓へ。メスと若いオスの群れは通年観察することができますが、大きな角を持つオスはメスを求めて高地から降りてくる繁殖の季節にしか見ることができません。運が良ければ、角を突き合わせて優位を競う行動も観察できます。ヒンドゥークシュ最高峰ティリチミール Tirich Mir(7,708m)の景色も圧巻です。

参考日程
Day01イスラマバードからチトラルまたはアユンへ。
Day02トゥーシ・シャシャ保護区でマーコールの観察&撮影
Day03チトラル・ゴル国立公園でマーコールの観察&撮影
Day04チトラル・ゴル国立公園でマーコールの観察&撮影
Day05チトラルまたはアユンからイスラマバードへ

マーコール

マーコール

マーコール

マーコール

ヒマラヤハゲワシ


※イスラマバード発着3泊4日以上から手配可能です。観察を確実なものにするためには2日以上の観察時間をとることをお勧めします。
※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数・宿泊施設のご希望などをお伺いしてお見積りいたします。

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:カシミールマーコールKashmir Markhor、ヒゲワシ lammergeier(Bearded Vulture)、クロハゲワシCinereous Vulture、ヒマラヤハゲワシHimalayan Vulture、イヌワシGolden Eagle、運がいいとユキヒョウSnow Leopard、オオヤマネコEurasian Lynxなど
カラコルムに「幻の動物」ユキヒョウを求めて
シーズン:12月~4月

「幻の動物」ユキヒョウを狙い上部フンザ、クンジュラブ国立公園へ。アイベックスを追い標高3,000~4,500m付近に降りてくるユキヒョウを探します。早朝、ユキヒョウの痕跡探しから始まり、足跡や獲物の近くでユキヒョウが見つかることも。冬のカラコルム山脈の景色、凍結したパミール川の景色も美しい地域です。

参考日程
Day01イスラマバードからチラスへ。
Day02チラスから上部フンザへ。
Day03上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day04上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day05上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day06上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day07上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day08上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day09上部フンザ・クンジュラブ国立公園での観察&撮影
Day10上部フンザからチラスへ
Day11チラスからイスラマバードへ

ユキヒョウ

ユキヒョウ

ユキヒョウ

アイベックス

アカギツネ

ヒマラヤアイベックス


※ユキヒョウの観察には時間が必要です。運が良いと1~2日で観察できることもありますが、基本的には一週間以上の観察日を設けることをお勧めいたします。
※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数のご希望などをお伺いしてお見積りいたします。
※ユキヒョウの観察は、基本的には車で移動して探します。ご希望により、トレッキングでユキヒョウ観察の可能性の高い谷でキャンプ(放牧用の小屋を利用)しながら観察することも可能です。
標高3,000~4,500m付近での観察となり、高山病の注意が必要です。また12~3月は大変気温が下がり、野外での観察には十分な防寒シューズ、防寒上着が必要となります。 イスラマバードからギルギットへの国内線利用も可能ですが、冬場は運航率が低下すること、スコープや撮影機材の運搬などのため、通常は陸路でカラコルムハイウェイの利用をお勧めしています。 ユキヒョウの専門ガイドの確保のために早めにご相談ください。

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:ユキヒョウSnow Leopard、ヒマラヤアイベックスHimalayan Ibex、アカギツネRed Fox、チベットオオカミTibetan Wolf、ヒゲワシLammergeier (Bearded Vulture) 、イヌワシGolden Eagle、ヒマラヤハゲワシ Himalayan Vulture、クロハゲワシ Cinereous Vulture、ヒマラヤセッケイHimalayan Snowcock、イワシャコChukar Partridge、ユキシャコ Snow Partridge、ユキバトSnow Pigeon、ベニビタイセリン Fire-fronted Serin、シロガシラジョウビタキWhite-winged Redstart、アカマシコ Common Rosefinch、モウコナキマシコMongolian Finch、カワガラス Brown Dipper、ムナジロカワガラスWhite-throated Dipperなど
デオサイ高原にヒマラヤヒグマを求めて
シーズン:7月~10月

「天空の花園」デオサイ高原の夏は、ワイルドフラワーで埋め尽くされ、オナガマーモットなどの野生動物が短い夏を謳歌する季節。ヒマラヤヒグマも5月頃に冬眠から目覚め、高原に姿を現します。標高4,000mでのキャンプとトレッキングで貴重なヒマラヤヒグマを観察・撮影!

参考日程
Day01イスラマバードから空路、スカルドゥへ。
Day02スカルドゥからデオサイ国立公園へ。キャンプ設営
Day03デオサイ国立公園での観察&撮影
Day04デオサイ国立公園での観察&撮影
Day05デオサイ国立公園での観察&撮影
Day06デオサイ高原よりスカルドゥへ
Day07スカルドゥより、空路イスラマバードへ。
または陸路、フンザへ

ヒマラヤヒグマ

ヒマラヤヒグマ

オコジョ

オナガマーモット

夏のワイルドフラワー


※ヒマラヤヒグマの観察にはデオサイ高原で3日以上の観察日を持つことをお勧めします。デオサイ高原への行き方は様々なルートがあり、フンザ地方との組み合わせが可能です。
※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数・ルートのご希望などをお伺いしてお見積りいたします。デオサイ高原でのキャンプは、ガイド、コックが同行し、国立公園のレンジャーと協力して必要なキャンプマネージメントを行います。
※ヒマラヤヒグマは、稀に車道から観察できることがありますが、基本はトレッキングとなります。標高4,000mの高原を歩きますので高地で歩く体力が必要です。カメラ機材を運ぶポーターの手配は可能です。
※標高4,000m付近での観察、宿泊となり、高山病の注意が必要です。また夏でも早朝は氷点下になり、秋は大変気温が下がります。イスラマバードからスカルドゥへの国内線は、以前に比べると運航率は良くなりましたが山岳フライトのため悪天候の際にはフライトキャンセルになります。陸路でイスラマバードからスカルドゥへ移動するにはまる2日間かかります。

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:ヒマラヤヒグマ Himalayan Brown Bear、オナガマーモット Long-tailed Marmot、アカギツネ Red Fox、オコジョ Stoat など。キャンプの周りにはデオサイ高原で繁殖するハマヒバリ Horned Larkやキガシラセキレイ Citrine Wagtailなど
「塩の山脈、ソルトレンジ」にパンジャーブウリアルを求めて
シーズン:12月~2月

パンジャーブ平野のソルトレンジの保護区に暮らす、パキスタン(パンジャーブ州)固有種のパンジャーブウリアル。その数は近年増加傾向にあります。イスラマバードからの日帰りで訪問が可能です。

参考日程
イスラマバードから日帰りで観察が可能です。早朝、イスラマバードを出発しソルトレンジにあるCBO(Community Based Organization)の保護区へ。夜、イスラマバードへ戻ります。

※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数・宿泊施設のご希望などをお伺いしてお見積りいたします。
※基本的には保護区内を車で移動し、車道から観察しますが、岩場を歩くこともあります。

パンジャーブウリアル

パンジャーブウリアル

パンジャーブウリアル

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:パンジャーブウリアル Punjab Urial
キルタール山脈にシンドアイベックスを求めて
シーズン:12月~2月

砂漠と石灰岩の台地が連なるキルタール国立公園へ。公園内のレストハウスに滞在し、シンドアイベックスの群れ、アフガンウリアルの群れ、チンカラなど砂漠の山岳地帯に生息する野生動物を探します。国立公園内に滞在するため、常に動物との遭遇とバードウォッチングのチャンスがあります。

参考日程
Day01カラチからキルタール国立公園へ。
公園内レストハウスにベースを設営。
Day02キルタール国立公園での観察&撮影
Day03キルタール国立公園での観察&撮影
Day04キルタール国立公園での観察&撮影
Day05キルタール国立公園よりカラチへ

シンドアイベックス

シンドアイベックス

シンドアイベックス

キンイロジャッカル

ステップヤマネコ


※シンドアイベックス、アフガンウリアルの観察にはキルタール国立公園で2日以上の観察日を持つことをお勧めします。
※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数のご希望などをお伺いしてお見積りいたします。キルタール国立公園内のレストハウスへは、ガイド・コックが同行し、国立公園レンジャーと協力しながら必要なキャンプマネージメントを行います。

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:シンドアイベックス Sindh Ibex、アフガンウリアル Afghan Urial、シマハイエナStriped Hyena、チンカラ Gujarat Chinkara、ジャッカル Golden Jackal、砂漠地帯の野鳥
バロチスタン マクランコーストとヒンゴル国立公園のワイルドライフと泥火山
シーズン:11月~2月

絶景の海岸地帯、泥火山地帯が広がるバロチスタンの野生動物を求めたアドベンチャーコースです。海岸のキャンプをベースとして毎日、ヒンゴル国立公園の山岳地帯や海岸へ。国立公園内ではシンドアイベックス Sindh Ibex、チンカラ Gujarat Chinkaraなどの野生動物に出会うことがあります。また、砂漠地帯ではカタシロワシ Imperial Eagle、ニシオオノスリ Long-legged Buzzard、チョウゲンボウ Common kestrelなどの猛禽類、海岸部ではシギ・チドリの仲間、アフリカクロサギ Western Reef Egret、モモイロペリカン Great White Pelicanなどの海鳥が観察されます。ヒンゴル川ではヌマワニ Mugger Crocodileも見られます。野生動物との遭遇だけでなく、キャンプ、泥火山ウォークや海岸線のドライブをお楽しみいただくプログラムです。


参考日程
Day01カラチからクンドマリールへ。
海岸のキャンプにベースを設営。
Day02海岸部&ヒンゴル国立公園での観察&撮影、泥火山探訪
Day03海岸部&ヒンゴル国立公園での観察&撮影、泥火山探訪
Day04海岸部&ヒンゴル国立公園での観察&撮影、泥火山探訪
Day05クンドマリールよりカラチへ

※ツアー料金はお問い合わせください。日数・人数のご希望などをお伺いしてお見積りいたします。海岸部のキャンプは、清潔なトイレ・シャワーもあり、人数によってはプライベートでご利用いただけます

泥火山地帯

ヌマワニ

エジプトハゲワシ

カタシロワシ

海岸のカモメ

観察できる可能性のある野生動物・野鳥:シンドアイベックス Sindh Ibex、チンカラ Gujarat Chinkara、ジャッカル Golden Jackal、ヌマワニ Mugger Crocodile、カタシロワシImperial Eagle、ニシハイイロペリカンDalmatian Pelican、モモイロペリカン Great White Pelican、シロチドリ Kentish Ploverなどシギ・チドリの仲間多数

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